潤む眼差し、そして唇
1180年から6年に渡り、日本には源平の戦いという大規模な内乱がありました。旧都奈良も焼き討たれ、大きな被害が出ます。インドの王族・貴族のように装飾品を身につける菩薩像。菩薩は悟りのために、広く人々を救います。平安時代までの絵画や彫刻の日本の仏教美術は、伝来した悟りを説くテキストがベースですが、絶望に直面した鎌倉時代は、目前の悲惨な現実に向かう仏教美術が必要でした。内面の悟りよりドラマティックな出会いを求め、水晶を巧みに使う技法で菩薩像が作られます。なぜならテキストが読めなくても、慈悲の温もりを体験できるように。