葡萄が目にしみる

2013年3月31日

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葡萄が目にしみる
著 者:林真理子

出版社:角川文庫

書は、葡萄づくりの町で進学高校に通う主人公乃里子が、同級生への淡い想いや憧れと葛藤、級友へのかすかな憎しみなどさまざまな感情を抱きながらも、素朴で多感に生きる軌跡を、山梨の四季の移ろいを背景に、山梨の方言とともに鮮やかに描き上げる小説。「なにも考えなくていいのだ、と乃里子は思った。このまま勉強したり、保坂に恋をしたりしているうちに高校時代はすぎていくはずだ。そして東京に行けばいい。東京の大学生になったら、すべて忘れてしまおう。ほこりっぽいセーラー服を着た少女だったことや、葡萄のジベ液で手を桃色に染めたこと、その他ぜんぶ、たくさんのこと。」著者は、葡萄農家ではないが山梨県の出身。ジベ液とは種無し葡萄の栽培に使われるジベレリンという植物成長調節剤のこと。うっかり漬け忘れや2度漬けのミスを防ぐために、液には食紅で赤い色を付ける。種なし葡萄とは、明治期に日本に入った品種デラウェアや巨峰。昭和31(1956)年に偶然に、ジベレリン液を使うと種なしの葡萄が出来ることが発見され、それは大きな葡萄の方がその反応が強いことがわかったのだ。本書をかさねて観ることで、果樹王国山梨の景観や、奈良時代からの歴史と文化の面影もまた楽しむことができる。

本から始まる旅がある。

    オススメ旅プラン
  • 山梨県笛吹川フルーツ公園

    山梨県笛吹川フルーツ公園

    住所:山梨市江曽原1488
    Tel:0553-23-4101

    れた日には富士山も望めるこの公園の南東には、甲州の山々に源を発する急流の笛吹川(ふえふきがわ)が流れ、その扇状地である甲府盆地が広がる。灌漑用水を整備して、ぶどうや桃をはじめとする果樹栽培が盛ん。春にはももの花が眼下に広がる桃源郷や新日本三大夜景にも選定された甲府盆地の夜景を一望できる。最上部には足湯もあり、足湯をしながらこの景観を眺められる。果樹園では多様なフルーツを実際に目にし、くだもの館では、フルーツに関する歴史や文化も知れる。※公園内のくだものは観賞のみ。※2013年4月1日より全天候型大型ネット遊具施設「わんぱくドーム」がリニューアルオープン。                     

  • 柏尾山(かしおさん)大善寺(だいぜんじ)

    柏尾山
    かしおざん
    大善寺
    だいぜんじ

    住所:山梨県甲州市勝沼町勝沼3559
    Tel:0553-44-0027

    良時代、東大寺大仏建立の責任者だった高僧行基。甲斐の国の勝沼・柏尾で修行したところ、満願の日、夢の中に葡萄を持った薬師如来が現れた。行基が刻んだ薬師如来像の安置された地が今日の大善寺であり、行基は薬園を作り民衆を救い、法薬の葡萄の作り方を村人に教えた。甲州ぶどうやワインブームの始まりは、薬種園であり、薬師如来の教え。その先には、仏教伝来の中国・西域、シルクロードがあり、オリエント文明や地中海につながるのだ。                                                                                           

  • 勝沼醸造株式会社

    アルガブランカ イセハラ白(勝沼醸造株式会社)

    住所:山梨県甲州市勝沼町下岩崎371
    Tel:0553-44-0069

    今、718年に仏教僧行基により山梨県勝沼町にもたらされたとされる「甲州ふどう」が国際的な注目を集めている。ワインは食との相性を愉しむもので、日本の風土との適性をもった甲州ぶどうから醸造されるワインは、唯一日本酒としてとらえることができ、日本料理との相性が抜群である。また、人と自然の関わりから産まれるワインは、その土地ならではの特性を発揮することがある。伊勢原の単一畑から収穫される甲州ぶどうから造られるワインは独特の魅力があり、フランスの有名シャトーとの提携と世界的な和食ブームにより国際市場で大きな話題になっている。                                     

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