逸楽と飽食の古代ローマ

2013年3月28日

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逸楽と飽食の古代ローマ
著 者:青柳正規

出版社:講談社学術文庫

書は、古代ローマの皇帝ネロの時代の風刺小説「サテュリコン」の最も有名な部分、「トリマルキオの饗宴」を徹底解読する。まずトリマルキオとは、奴隷から開放されて巨万の富を築く人物。古代ローマの饗宴とは、午後3時頃に風呂に入り、友人や知人ばかりではなく、よく知らない人も招かれて、有力者が開くパーティである。そこには山海の珍味に美酒が用意され、少年奴隷がかしずき、銀の尿瓶もある。古代ローマの平和とは何か?市民権をもつものには、最低の食料供給が保証され、またエンターテインメント、人生を楽しむ娯楽施設が整備されていることだった。「パンとサーカス」が保証された状態。本書が徹底解読するこの風刺小説は、トリマルキオを、皇帝ネロの時代の新興の富豪のひとりで、派手な装いの悪趣味を賓客に笑われ、教養人を装って古典の知識を披露し間違いを露呈する、滑稽さをもったキャラクターとして描く。当時の高級食材と料理、趣向を凝らした器、曲芸師、剣闘士競技の余興、「動く天井から土産物が降ってくる」といった大掛かりな装置まで描写。古代ローマの宮廷や権力者らの私邸で行われていた饗宴文化を考証する資料となって、当時の社会と、人々の人生観を再構築するのだ。

本から始まる旅がある。

    オススメ旅プラン
  • 大塚国際美術館

    大塚国際美術館

    住所:徳島県鳴門市鳴門町 鳴門公園内
    Tel:088-687-3737

    ての道がローマに続く古代ローマ帝国は、旅する国である。そして情報の伝達を大切にした。情報を体系的に見て、そして記録する。情報の整理をする中で、効率性を見い出し、合理性を築いていく。ローマが情報を記録する力を育てたことは、古代ローマの建築物がまた証明する。陶板に再現されたものは、二千年たっても色褪せない。記録の力が優れている。陶板名画を展示するこの美術館では、美とともに古代の記録も目にすることができるのだ。                                                        

  • 高開(たかがい)の石積

    高開
    たかがい
    の石積

    住所:徳島県吉野川市鴨島町鴨島115-1
    問合せ先Tel: 0883-22-2226(吉野川市商工観光課)

    代ローマ帝国の文化は、石の文化である。道路整備であれ、建築であれ、1G(重力)を見つめ、効率と合理性を見つめる。それは古代より人に備わった資力。野外博物館美郷の玄関口、美郷ほたる館から徒歩で約3km、文化庁の「文化的景観」に選定されるこの石積み。300年以上急峻な土地での農地確保のために積み上げられたもので、決して一朝一石ではできず、仮に機械で積んでも300年の維持管理はできない。ライトアップされ、浮び上がる石積の姿には、目から鱗が落ちる。                       

  • 阿波おどり

    阿波おどり

    問合せ先:社団法人徳島市観光協会
    Tel:088-622-4010

    代ローマのエンターテインメントがサーカスなら、日本は踊ること。踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らなそんそん、である。盆踊りの阿波踊りは、桃山期、徳島城が竣工した時に、「城の完成祝いとして、好きに踊れ」と奨励されたことで盛んになった。また踊りの源流は、踊り手と歌い手が分かれる念仏踊りと言われる。13世紀鎌倉期初頭、称名念仏(しょうみょうねんぶつ)の元祖、法然が阿波の隣国讃岐で広めた。「トリマルキオの饗宴」の滑稽さと阿波踊りの滑稽さは、重なる部分を持ちながら、死生観はまた違う。

逸楽と飽食の古代ローマ

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