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著 者:ヴァルター・ベンヤミン 出版社:岩波書店 |
05年9月大阪、阪急百貨店梅田本店の阪急ビル建て替えに伴い姿を消した阪急梅田旧コンコースは、19世紀前半にパリにつくられたアーケード街、「パサージュ」だった。この本の第1巻に、「パリ―19世紀の首都」というエッセイがある。鉄道、パサージュ、百貨店、鉄骨建築は、19世紀の「都市の光」を象徴する。筆者のヴァルター・ベンヤミン(1892−1940)は、ユダヤ人美術商の家に生まれ、1933年ナチス政権成立とともにパリへ亡命した文芸評論家、社会学者。この本は彼のメモ書きをまとめたもの。パサージュの意味は、「移行」、「街路」や「通過点」。19世紀前半のパリでは、大量生産により織物取引が盛んになり、パサージュには最新の流行品を取り揃えた百貨店の前身となる店舗が現われる。集団の夢、進歩の夢。しかしベンヤミンは、時代の進歩の思想には距離を置き、都市や百貨店や商品の通過させるようにした装置そのものにのみ関心をもつ。そこに作者や企画者の意味や意図、歴史が隠されている。ベンヤミンは、いずれは覚める明日の進歩の夢より、現代にある過去の意味を読み解く。思想は主題にしがみつき、職人と商業は述語と方法を神とする。
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昭乗作 草庵茶室「松花堂」住所:京都府八幡市八幡女郎花43
Tel:075-981-0010吉兆の松花堂弁当の名が由来する松花堂昭乗(しょうじょう)がプロデュースした草庵。昭乗は、江戸時代初期に活躍した「寛永の三筆」で石清水八幡宮の社僧。茶の湯や和歌、書画など多芸に秀でた昭乗は、茶の湯を通して公家と武家の仲介役としても奔走した。八幡市立松花堂庭園・美術館には、男山にあった遺構「松花堂」と泉坊書院が移築されている。庭園には、黄金色の桿(かん)で芽溝部に緑の縦縞が入った、荘厳なる金明孟宗竹(きんめいもうそうちく)も植えられ、絵心をもった大書家の面影がよく演出されている。
※画像:八幡市立松花堂庭園・美術館