著 者:マルセル・プルースト
出版社:集英社

の本は全13巻の長編小説、冬の日に何気なく紅茶に浸したプチット・マドレーヌを口に入れたとたん、主人公が幼年時代を過ごした場所の生きた姿が蘇ることからはじまる。19世紀末から20世紀初頭のパリのベル・エポック、よき時代の情景や心理を格調高く描写する作品。そこには善悪ではない、徹底した事実の観察がある。その観察はのちにパリのアーケード街、「パサージュ」を遊歩し、バサージュ論を書き残したベンヤミンにつながる。プルーストは、ひとの主観的な体験から生まれる質感、クオリアで記憶をたどり過去をたどる。善悪や市場価格ではない、質感、クオリアで事実を見れば事実の奥行きも感じられる。お茶や枯山水の庭園にも通じる感覚。その感覚で、古代ローマ人がその場所の安定性や個性を感じ取ったゲニウス・ロキ、「場所の守護霊」も感じ取れる。19世紀からはじまる産業社会や消費社会は、ものの価値を市場価格で単純化していく。しかし事実は決して単純ではなく、いろいろなものがかさなりあって生きている。UMAMIも生きているものである。それらを質感で料理の奥行きの中に包み込むから、グランシェフの料理には価値がある。そこに女神も訪れる。

本から始まる旅がある。

    オススメ旅プラン
  • 奥明日香

    奥明日香

    問合せ先:明日香村役場(奈良県高市郡明日香村大字岡55)
    Tel:0744-54-2001

    われた時を求めて、質感、クオリアでたどる景観。鸕野讚良(うののささら)皇女が持統天皇となる人生で、吉野に向かい何度も峠を越えた奥明日香。明日香村の南東方向にある稲渕(いなぶち)、栢森(かやのもり)、入谷(にゅうだに)の3つの集落をさす。そこにある棚田の景観は、2011年春、奈良県で初めて重要文化財に選定された。棚田は丘陵に沿って、土や石垣で土坡(どは)という盛り上げを作り、水の流れをコントロールする。                                                 
                                        

  • 古い町並み たつの市龍野町立町(たつのちょうたてまち)

    古い町並み たつの市龍野町立町(たつのちょうたてまち)

    問合せ先:たつの市観光協会
    Tel:0791−64−3156

    われた時を求めて。寛文12(1672)年、脇坂家3代目老中堀田家から養子の安政が信濃飯田から、揖保川に朝夕深い川霧がたつ龍野に移る。この地で200年、維新まで生き延びる。しかし5万3千石の石高は変わらず、参勤交代の費用は倍以上。安政実兄の改易蟄居もあり、決して割の合う国替えではない。のちに老中も勤める格式と経済力のために知恵を絞る。結果、江戸期日本を代表する醤油醸造、明治期、童謡赤とんぼの詩人三木露風が生まれる町並みが醸成されたのだ。                                    
                                      

  • 守屋多々志作「住吉燈台(夏祭)」

    守屋多々志作「住吉燈台(夏祭)」

    住所:岐阜県大垣市郭町2-12
    Tel:0584-81-0801

    われた時を求めて。法隆寺金堂壁画の再現模写にも取り組んだ同郷の日本画家、前田青邨(せいそん)に師事した守屋多々志が生まれたのが大垣市船町である。そして本作は、その船町のシンボルである住吉燈台の夏祭りを描いた作品である。水の都・大垣の夏の情緒を描き、大垣の旅情をスケッチしている。松尾芭蕉が「奥の細道」紀行の終点「むすびの地」大垣へ到着したのは元禄2年8月21日であり、かの地にしばし留まり、旅の疲れを癒した。何度も大垣を訪ねた芭蕉の気持ち、その心情も理解できる作品。             

    大垣市守屋多々志美術館所蔵


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