山河太平記

2013年3月28日

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山河太平記
著 者:陳 舜臣

出版社:ちくま文庫

書は、神戸の著名な歴史作家 陳舜臣が、兵庫県から大阪、三重、奈良、和歌山にまたがる近畿地方を中心として全国に広がった『太平記』ゆかりの土地を歩きながら、乱世を通して日本を読み解く歴史エッセイである。神戸大学に「赤松城址」という標柱があり、近くには赤松町が存在するが、実はこれは、鎌倉幕府打倒の元弘の乱(1333)で後醍醐天皇の皇子護良(もしよし)親王の令旨(りょうじ)を受けて挙兵した、播州を治める赤松則村円心とは関係しない。5百の手勢の円心が、5千の鎌倉幕府の京都六波羅軍を迎え撃ったのは、その西隣の摩耶山城。楠木正成の千早城の戦いと並び称される戦いである。円心とは、「野伏」の大棟梁である。ノブセとは、野武士ではなく、山ブシに通じる寺社の施設を背景にして戦う集団である。結局、この戦い以降、赤松氏は足利幕府を支える守護大名となり、日本歴史を動かすことになる。摩耶山天上寺は、大化2(646)年に孝徳天皇勅願で開山し、平安時代弘法大師空海が仏母摩耶夫人像を納めてから、山名に摩耶の名がつく。また紀州・熊野とつながりをもち、摩耶山の古道は修験者の道。摩耶山と「野伏」の大棟梁、赤松円心とは親和性を持つ。戦う幕府軍には、相手も場所も悪かった。

本から始まる旅がある。

    オススメ旅プラン
  • 掬星台

    掬星台
    きくせいだい

    住所:兵庫県神戸市灘区摩耶山町
    問合せ先Tel:078-371-5937(神戸市森林整備事務所)

    松円心が望んだ景観は、六甲山系の摩耶山「掬星台」で眺められる。夜景は日本三大夜景に数えられ、夜空の星と眼下に広がる神戸の街が宝石箱をひっくり返したように美しい。標高は702m。三大夜景の函館・函館山(334m)、長崎・稲佐山(333m)より高い。また名前は、手を伸ばせば星が掬(すく)えることから由来。そしてここが特別であることの現実的な理由は、難波宮のある大阪・上町台地からよく見える、古代の通信所だったのだ。                 

  • 摩耶山天上寺

    摩耶山天上寺

    住所:兵庫県神戸市灘区摩耶山町2-12
    Tel:078-861-2684

    寺の歴史は、大化2年(646)に遡る。それも難波宮を開く孝徳天皇の勅願の寺としてである。花山天皇・正規町天皇の御願寺でもあり、広く信仰を集める。大化の改新を進めた中大兄皇子たち新政権は、朝鮮半島や中国との交流・結びつきを求め、積極的に大阪・難波に出る。ご本尊の十一面観音は、ちぬの海(大阪湾)を眼下に守護し、海上安全の守り神でもあった。600年後、本寺の重要性を赤松円心も見抜いている。「円心は、時代を見渡す目をもつノブセ」であった。

  • 高野山 赤松院

    高野山 縁起

    住所:和歌山県伊都郡高野山町高野山571
    Tel:0736-56-2734

    剛峯寺奥の院に一番近い宿坊である本院は、延長元年(923)創立。その後、護良親王が本院在住当時の元弘元年(1331)、赤松則村が随従し、入道して円心と名乗ることになる。以降、ここが赤松家一族の菩提所となった。2000坪の庭園は、広大な林泉の美をもって山内一と称せられる。            

    高野山 赤松院(せきしょういん)蔵

山河太平記

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