JALスカイアンバサダー(北海道)佐藤 愛(SATO AI)万環玄亀 いとなみのエレガンス
プラキストン線
気候により動物や植物が分布する境界線をプラキストン線といい、それが本州と北海道の間、津軽海峡上にあります。大いなる昔、本州のニホンジカはその境界線を渡り、北海道のエゾシカとなりました。生きるために、あたらしい気候や風土に適用するように自らを進化させたのです。それは古代からひとも同じでした。そしてそれらの進化のみなもとは、生きるものに宿る生命力でした。
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イオマンテ
アイヌ文化の聖なる儀式イオマンテは、食としての恵みを授かった熊などの魂、霊魂カムイを、神々の世界に送り返す祭りです。アイヌ文化は日本の北海道だけではなく、樺太、カムチャッカ半島などオホーツク海一帯に広がった文化。ロシア極東のアムール河(黒竜江)流域や本州東北、また琉球の文化ともかなさり合います。全てのものに等しく、境なくカムイが宿ると信じる文化です。
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大いなる中空
北海道函館市南茅部(かやべ)地区で発見された3500年前(縄文時代後期)の国宝・縄文土偶は、中が空になっている土偶です。縄文時代、人形(ひとがた)をした土偶は祈りの対象や儀式で使われたもの。そして人形の中が空というのは、空の部分に不滅の霊魂が宿るとも見えます。身体の内に霊魂や大切なものを保つバランスこそが、生きることだと思えます。そして内なる大切なものは、目には見えないものです。
大いなる地産
国宝・中空土偶が発見された函館市南茅部地区の段丘の前の海には、祭礼の縁起物として朝廷や将軍に献上された地産の宝物、真昆布が生きています。UMAMIが豊かで生命力の強い真昆布。生命力とは、バランスを保つ力。そして、大いなる自然の恵みも霊魂も、自分の中を空にして、感覚で知り保つもの、と古代から人は知っていたのではないでしょうか。