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著 者:平田雅哉 出版社:池田書店,建築資料研究社 |
ランシェフは、UMAMIを込めるために一皿の料理を立体的に設計する。また平面的に書かれた彼らのレシピーを立体的に創造し考えてみても、その調理の際の彼らの質感を感じることはまたなかなか難しい・・・。「ええか、よう聞けや。おまえの傷は舐めればなおるかもしれんがな、この柱の疵は永遠に直らんのや。わかったか!」。森繁久弥が主演した東宝映画「大工太平記」のモデルの平田雅哉(1900−1980)は、昭和の初めから同30年代まで、大阪を中心に活躍した大棟梁。芦原のつるや旅館、なだ万、錦戸、吉兆、城崎の西村屋、八日市の招福楼などを手掛ける。暴れ者で、頑固で、仁義を通す男。彫り物技術や製図技術に堪能で、またその言葉もはっきりすっきりとしている。「わしを信用せんのやったら寄ってくるな」、「大阪の工夫と関東の気っ風。この両方が上方には必要なんや」、「どんなときでも、うろうろする奴が一番あかん」、「この人は偉い人やとおもうたら、その人のことが盗めるまで、自分の文句を言うな」。仕事の現場の質感を伝える日本の職人魂がいっぱいつまった一冊。現代のグランシェフと昭和の大棟梁、時空を超えてそこには通じる味わいがある。
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草庵茶室「松花堂」住所:京都府八幡市八幡女郎花43
Tel:075-981-0010松花堂昭乗(しょうじょう)がプロデュースした草庵。昭乗は、江戸時代初期に活躍した「寛永の三筆」で石清水八幡宮の社僧。茶の湯や和歌、書画など多芸に秀でた昭乗は、茶の湯を通して公家と武家の仲介役としても奔走した。八幡市立松花堂庭園・美術館には、男山にあった遺構「松花堂」と泉坊書院が移築されている。庭園には、黄金色の桿(かん)で芽溝部に緑の縦縞が入った、荘厳なる金明孟宗竹(きんめいもうそうちく)も植えられ、絵心をもった大書家の面影がよく演出されている。
※画像:八幡市立松花堂庭園・美術館