Key Book

白いオホーツクからの伝言「流氷」
著者名:菊地慶一
出版社:文藝春秋

のみな成長過程は美しい。本書の著者、菊池慶一氏は学校教師の経験をもつ作家。流氷はシベリアの大河、 アムール河からやってくる。オホーツク海に出た真水は、寒風で冷やされて表面の海水は重たくなり沈み込んでい く。流氷はしょっぱくない。海水が凍る時、濃い塩水、プラインを排出。結果水深50メートの上層に塩分の薄い流 氷をつくる。オホーツク海は、閉じた海。カムチャッカ半島や千島列島、北海道に囲まれ日本海や太平洋の水が入 りにくい。だから流氷は南にながれ、北緯44度の街網走までやってくる。流氷は南の網走へ旅する間、オホーツク 海を動かす。プラインが深い海に沈み、海底藻類のアイス・アルジーという植物プランクトンを上昇させる。アイス・ アルジーは光を得て成長。それを動物プランクトンが食べ、動物プランクトンを小さい魚が食べ、小さい魚を大きい 魚が食べる。凍る海は、豊かな海になる。贈り物を届けた流氷は、氷板になり氷塊になっていく。その過程が美し いと菊池氏は語る。フラジャイル。ひとは壊れやすく、また自分以外の何かの役にたちたいと思っている(松岡正剛 千夜千冊「ルイス・トマス」)。流氷とひとの生命(いのち)、かさなる。菊池氏は空襲にあう経験も持つ。
本から始まる旅がある。
オススメ旅プラン
  • クリオネの飼育
    住所:オホーツク流氷館 天都山245-1
    Tel:0152-43-5951

    リオネは、内蔵のみが不透明な巻貝の仲間。名はギリシア神話に由来し、流氷の天使とも言われる。流氷の贈 り物を受け取る北緯44度の街網走にある本館で飼育される。何故、ここでクリオネが飼育され展示されるのか? まず可愛く可憐で、生命(いのち)が目に見えるから。そして流氷が旅する雄大で傷つきやすい、フラジャイルなオ ホーツク海の生命(いのち)をわかりやすく伝えるため。ここを訪れるもののこころの景観である。
  • モヨロ貝塚館
    住所:北海道網走市北2条東2丁目
    Tel:0152-43-2608

    正2年、網走で従来と全く異なった遺跡を発見、モヨロ貝塚と命名される。後に1200年前平安期に千島列島、サハリン、アムール川流域を広域に結ぶ北の民族が網走に移り住んだ遺跡と判明。8~9世紀中国東北地方靺鞨の族長のシンボル、青銅の鈴や鐸、帯飾りや海獣の骨・牙を彫った動物像があり、細い優雅な線文様の土器が出土。本遺跡はオホーツク海が、カムチャッカ半島や千島列島、北海道に囲まれた閉じた海であることを伝えている。
  • きばなふじ ルイ・コム・フォートティファニー
    住所:北海道近代美術館所蔵
    Tel:011-644-6883

    ばなふじは、黄金色の藤の花。大柄の豆科の植物で、初夏に房を連ねて咲く。ゴールデンチェーン、金鎖とも 言われる。ヨーロッパ産。ニューヨークのティファニー創業者の息子、ルイ・コムフォートティファニーは、画家を目 指し渡欧、産業化・都市化に接し、帰国後ステンドグラスの作家になる。テーマは豊かで壊れやすい自然との共 生。大柄なきばなふじをスタンド・カバーにするのは彼の意匠。ゴールデンチェーン、また意味を感じる。